2024年3月25日月曜日

COUNT ME IN 魂のリズム

雨上がり。新宿シネマカリテにてマーク・ロー監督作品『COUNT ME IN 魂のリズム』を観ました。

山頂の天文台の白いドームの空撮から映画は始まる。大きなドームの中ではスティーヴン・パーキンスJane's Addiction)のドラム・サークルのセッション。ドラムセット、コンガ、ジャンベ、あらゆる打楽器を叩く誰もが笑顔になる。そしてうねるシンバルのスーパースロー画像から "COUNT ME IN" のタイトルバックへ。

スティーヴン・パーキンス、チャド・スミスRed Hot Chili Peppers)、シンディ・ブラックマン・サンタナSantana / Lenny Kravitz)、ジェス・ボーウェンThe Summer Set)のインタビューとセッションを軸に古今のロックドラマーにフォーカスしたドキュメンタリー映画です。

マックス・ローチバディ・リッチらジャズドラマーがジンジャー・ベイカーCream)に影響を与え、その影響を受けたイアン・ペイスDeep Purple)に影響を受けたニコ・マクブレインIron Maiden)。スチュワート・コープランドThe Police)の落ち着きのない早口はヲタクそのものだし、サマンサ・マロニーHole)がモトリー・クルーのツアーサポートに入るエピソードも熱い。

トッパー・ヒードンThe Clash)やラット・スキャビーズThe Damned)らパンクバンドのドラマーが出てくるのもイギリス映画ならでは。一方でプログレ勢はニック・メイソンPink Floyd)ぐらい。ビル・ブラッフォードKing Crimson)、カール・パーマーEL&P)、フィル・コリンズGenesis)あたりは取り上げられてもいいんじゃないかと思います。

ドラマーに対するクレイジーなパブリック・イメージは、キース・ムーンThe Who)が作り、ジョン・ボーナムLed Zeppelin)が固めたといっても過言ではなく、ホテルの部屋の破壊をテレビ番組でキース本人が実演するのは衝撃映像だし、同世代のボブ・ヘンリットThe Kinks)の「キースは延長コードを繋いで電源を入れたままホテルの窓からテレビを投げていた」という証言は最高ですが、キース・ムーン生前最期の作品 "Who Are You?" の計算され尽くされたドラミングに関するスティーヴン・パーキンスの解説が僕的ハイライトでした。

女性ドラマーに対する男性オーディエンスからの偏見、1980年代のLinn Drum(サンプリング・リズム・マシン)の台頭についても触れられる。

鍋やフライパンを叩くが好きな子どもがクリスマスにおもちゃのドラムキットをプレゼントされたときの狂喜乱舞のホームビデオが映りますが、そのまま大人になったドラマー自身が、ベテランも若手も、好きなドラマーを語るその語り口がみな楽しげでいい。「ドラムのコミュニティはあたたかくて間口が広い」というドラムドクターのロス・ガーフィールドのコメントに尽きる。近年量産される音楽ドキュメンタリーのフォーマットを借りているものの、ミュージシャンの伝記映画につきまとうドラッグなど負の側面がなく、好きなことについてしか話さない。ずっと観ていたくなるハッピーな映画です。

 

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