1907年(明治40年)、横濱西洋劇場で佛國領事主催の『ジゼル』。客席から乗り出して夢中でバレリーナたちをスケッチするフジコ(當真あみ)の姿があった。終演後、客席に忘れた手提げを取りに戻ったフジコは、道着姿でバレエを踊る千鶴(嵐莉菜)に目を奪われる。
1912年、大戦の足音が忍び寄るパリにフジコは渡った。9区のパサージュ・ジュフロワで日本画のギャラリーを構える叔父若林(尾上松也)を手伝いながら、画家になるために勉強している。街中で暴漢に襲われた際になぎなたでフジコを助けてくれた千鶴と再会する。武家の出でなぎなた道場の跡取り娘である千鶴は、道場をパリに進出させた両親について来ていたが、バレリーナになる夢を捨てられずにいた。
「自分のやりたいことをやるのが人生じゃないの?」。フジコのアパルトマンの階下にロシアからの移民で元バレリーナの母オルガ(門脇麦)と暮らすピアニストのルスラン(早乙女太一)に背中を押され、ガルニエ宮のオペラ座を目指して千鶴の奮闘が始まる。
クライマックスは戦時下1916年12月のオペラ座公演『ジゼル』。家父長制が絶対の時代に、夢を追ってパリに渡ったふたりの日本人少女の挑戦を、第一次世界大戦を背景にしたオリジナルストーリーで描こうという気概は評価したいですが、物語はバランスとまとまりを欠いていると思います。主人公フジコが途中から絵を描かなくなり、千鶴のサポート役に回ってしまう。マティス、ミュシャ、モンドリアンなど、当時気鋭の現代美術作家たちの才能に圧倒されて、と涙ながらに訴えるが、エンドロールの絵画作品の列挙だけでは薄く感じました。
画商の叔父のジブリ風味のカーアクションはちょっとやり過ぎですが、キャラクター造形はとてもよく、「パリのリストランテでは」などと言わせ胡散臭さをさりげなく示唆しています(リストランテはイタリア語)。
當真あみさんと嵐莉菜さんの『ちはやふる -めぐり-』コンビは、9歳分の成長を一所懸命表現していて、とてもがんばったと思います。なぎなたの殺陣は小気味よく、パリ国立高等音楽院出身の服部隆之が手掛けるアコーディオンと管弦楽の劇伴、ベルエポック期のパリの街並みと絢爛豪華なオペラ座の外観内装をはじめとした背景美術が素晴らしかったです。

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