白黒テレビ画面でエド・サリバンに紹介されバンドは演奏を始める。熱狂する客席のティーンエイジャーたち。
ザ・ビートルズの初代マネジャー、アラン・ウィリアムズが1961年を回想する。「当時はボビーの時代だった」。ボビー・ヴィントン、ボビー・ライデル、ボビー・ダーリン、ボビー・ヴィ―。エルヴィスは兵役、チャック・ベリーは刑務所、ジェリー・リー・ルイスは児童婚で叩かれ、バディ・ホリーは飛行機事故死。ロックンロールが下火になり、甘いポップスを歌うボビーたちが台頭していた。
英国リヴァプールのキャヴァーンクラブから西ドイツのハンブルグへ渡った下積み時代について多く時間が割かれている。二代目マネジャー、ブライアン・エプスタインがもたらしたビジュアル面のアップデート。そして世界的なブレークまで。
現時点で正史とされているハンター・デイヴィス著『増補完全版ビートルズ』上下巻(河出文庫)から逸脱する新事実はありませんが、当時のツアマネ、レコーディングエンジニアらの裏方、そしてなによりデビュー前に解雇されたピート・ベストの肉声が聞けます。ピート・ベストからリンゴ・スターへのドラマー交替の理由は演奏技術や素行の問題ではなさそうなのですが、結局よくわかりませんでした。
世代的にロンドンパンクに夢中だった十代の僕は、物心ついたときには既に解散していたザ・ビートルズの音楽をそれほど気に留めてはいませんでしたが、1987年に初CD化された"Please Please Me" モノラル盤をバイト先のレンタル屋の割合しっかりしたオーディオで再生したとき、1曲目に収録された "I Saw Her Standing There" のポール・マッカートニーのベースラインのドライブ感と音圧には腰が抜けるほど驚いたものです。
本作のフッテージはすべて前述のエド・サリバン・ショーの有名なテイクですが、音声はリマスターされており、今回もまたポールのベースに心震えました。