ハロウィンの夜、東京メトロはゾンビで満員です。仮装とは最も縁遠そうなバンド(笑)LITTLE CREATURESの25周年ライブに行きました。
会場はCLUB eX。品川プリンスホテル新館3階にある深紅のベルベットに包まれた円形ホールです。開演時間に場内ナレーションが。グッズ紹介の「ポケットがふたつついたとっても便利なトートバッグです」(棒読み)でまず笑う。
客電が落ち、ミラーボールの回る中、STYXの"Mr. Roboto"に乗ってお揃いの白シャツ、ホワイトジーンズにグレーのハンチングを被った3人のメンバーが登場。ホール中央の円形ステージの内側を向いて"MOSQUITO CURTAIN"から演奏が始まります。客席に背を向ける格好になりますが、高校の同級生バンドが初めてスタジオに入って最初の一音を鳴らしたときの初期衝動そのままを象徴しているように見えました。
5年ぶりのワンマンライブ。十代でデビューしてメンバーチェンジなく25年間。リリースこそ多くはありませんが、淡々と気負わず自然体で質の高い音楽を作り続けてきました。常にコンテンポラリーと対峙し、あらゆる音楽に対する真摯な愛情とエレガントな革新性とそこはかとないユーモアをフレッシュな状態で保ち続けている奇跡。スリーピースというバンドの最小単位でありながら人間関係にドライな距離感と深い信頼があるからこそ可能にしているのだと思います。
元来プロデューサー気質で且つ高いプレイヤビリティとセンスを持つ3人が時々こうして集まって、謙虚ながらも確信に満ちた姿勢で、成熟した音楽を奏でる。ポップカルチャーの良心がそこにありました。
2015年10月31日土曜日
2015年10月25日日曜日
アサガヤノラの物語
来週のレコ発ワンマンの告知を下のエントリーでしていますが、先月Poemusica Vol.42でも共演したmayulucaさんご出演の日曜音楽バー「アサガヤノラの物語」に行ってきました。
mayulucaさんの音楽について説明することはなかなか難しくて、言葉で表すと、ミニマルで静謐な形式美、正確な内的律動性、硬質な言語感覚、それらの配置と移ろいのバランス感覚みたいなことにどうしてもなってしまいます。
でも実は、ギターの甘く優しい音色や居住まい正しい発語といった皮膚で感覚するテクスチュアの心地良さが一番の魅力なのかもしれないな、と思いました。CDの作り込まれたサウンドスケープも美しいのですが、ライブで聴くと目の前で質量を帯びてふるえる空気に指で触れられるような感じがして、そのインティメートな感触にいつも心打たれ、創作意欲がかき立てられます。
最近購入したという1984年製のTAKAMINE BRUNO F-150。こぶりなボディで最初は低音がやや物足りなく感じたのですが、ライブが進むにつれて歌声とのマッチングが「これしかない」と思えてきました。御茶ノ水の楽器店でそのギターと出会ったときの感動を綴ったエッセイの一節を朗読して(画像参照)次の曲に繫いでいくライブの構成には、聴いている僕たちも体験を共有しているような感覚がありました。
僕の新作詩集『ultramarine』に収録される「森を出る」の朗読のあと、この詩の着想のもとになった「きこえる」を歌ってもらえたのもうれしかったです。その次の「覚悟の森」を聴いて、「森を出る」で実際に引用したのは「きこえる」の歌詞ですが、視点は「覚悟の森」から得ていたことに気づきました。森に入ることに惹かれながらもためらう人と森から出る人と。
そしてmayulucaさんの静かで美しい音楽に動かされ、帰りの地下鉄大江戸線で、来週のアサノラのセットリストの前半部の全面的な差し替えを決めました。
mayulucaさんの音楽について説明することはなかなか難しくて、言葉で表すと、ミニマルで静謐な形式美、正確な内的律動性、硬質な言語感覚、それらの配置と移ろいのバランス感覚みたいなことにどうしてもなってしまいます。
でも実は、ギターの甘く優しい音色や居住まい正しい発語といった皮膚で感覚するテクスチュアの心地良さが一番の魅力なのかもしれないな、と思いました。CDの作り込まれたサウンドスケープも美しいのですが、ライブで聴くと目の前で質量を帯びてふるえる空気に指で触れられるような感じがして、そのインティメートな感触にいつも心打たれ、創作意欲がかき立てられます。
最近購入したという1984年製のTAKAMINE BRUNO F-150。こぶりなボディで最初は低音がやや物足りなく感じたのですが、ライブが進むにつれて歌声とのマッチングが「これしかない」と思えてきました。御茶ノ水の楽器店でそのギターと出会ったときの感動を綴ったエッセイの一節を朗読して(画像参照)次の曲に繫いでいくライブの構成には、聴いている僕たちも体験を共有しているような感覚がありました。
僕の新作詩集『ultramarine』に収録される「森を出る」の朗読のあと、この詩の着想のもとになった「きこえる」を歌ってもらえたのもうれしかったです。その次の「覚悟の森」を聴いて、「森を出る」で実際に引用したのは「きこえる」の歌詞ですが、視点は「覚悟の森」から得ていたことに気づきました。森に入ることに惹かれながらもためらう人と森から出る人と。
そしてmayulucaさんの静かで美しい音楽に動かされ、帰りの地下鉄大江戸線で、来週のアサノラのセットリストの前半部の全面的な差し替えを決めました。
2015年10月22日木曜日
Poemusica Vol.43
第三木曜日夜のライブは6月以来、4ヶ月ぶりです。下北沢Workshop Lounge SEED SHIPでPoemusica Vol.43が開催されました。
真っ赤な花の髪飾りをつけた桂有紀乃さん。Poemusicaに出演するのは2度目、去年3月のVol.26以来です。小さな全身を使って声を発する。その歌声はまだ叶えられていない祈りでもあり、時に辛辣に響くこともありますが、大きな愛を持っているのが伝わってきます。激しいパフォーマンスの最中でも、思いが強過ぎて混沌として見えるときでも、客席を冷静に観察して、関係を築きたいといつも考えているのではないでしょうか。懐疑と信頼の振幅が大きく、それがいつでも観客の感情を揺さぶります。
ちみんさん(画像)が立って歌うのを、そういえば初めて見たかもしれません。伸びのある美声は音程が正確で、地声もファルセットも豊かな響きを持っています。特別な声。歌うことが生きること、歌うために生まれてきたような人。僕からみたらそんな精霊的な存在なので、楽屋で話をしていると、この人に日常があるということ自体が不思議なのですが、その日常が彼女の音楽を確かに形作っているのです。
SEED SHIP初出演の潮崎ひろのさん。仔犬のような可愛らしい人。やわらかくてまっすぐな歌声は世界のありようを信じている。信じているが故に危うさも孕んでいる。そしてその危うさを彼女生来のタフネスが抑制している。そんな風に僕には聴こえました。吉田宏志(よっしー)さんのスケール感と包容力のあるピアノとひろのさんのトイピアノのソリッドでキュートな音色のアンサンブルが、楽曲のピュアネスを一層引き立てていました。
僕は12月発売予定の新詩集『ultramarine』(ウルトラマリン)から5篇、ハロウィンの詩「線描画のような街」、「水玉」「花柄」、ちみんさんの歌詞を引用している「希望の駅」と「すべて」、前作『新しい市街地』から「チョコレートにとって基本的なこと」の計6篇を朗読しました。
来月11月のPoemusicaは、たけだあすか (acca)さんが歌いに来てくれます。ボジョレーヌーヴォー解禁の夜です。乾杯しましょう!
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Poemusica Vol.44 ポエムジカ*詩と音楽の夜
日時:2015年11月19日(木) Open19:00 Start19:30
会場:Workshop Lounge SEED SHIP
世田谷区代沢5-32-13 露崎商店ビル3F
03-6805-2805 http://www.seed-ship.com/
yoyaku@seed-ship.com
料金:予約2,200円・当日2,500円(ドリンク代別)
出演:たけだあすか (acca) from大阪(vocal/guitar)
松浦湊(vocal/guitar)
松本佳奈(vocal/piano)
カワグチタケシ (PoetryReading)
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真っ赤な花の髪飾りをつけた桂有紀乃さん。Poemusicaに出演するのは2度目、去年3月のVol.26以来です。小さな全身を使って声を発する。その歌声はまだ叶えられていない祈りでもあり、時に辛辣に響くこともありますが、大きな愛を持っているのが伝わってきます。激しいパフォーマンスの最中でも、思いが強過ぎて混沌として見えるときでも、客席を冷静に観察して、関係を築きたいといつも考えているのではないでしょうか。懐疑と信頼の振幅が大きく、それがいつでも観客の感情を揺さぶります。
ちみんさん(画像)が立って歌うのを、そういえば初めて見たかもしれません。伸びのある美声は音程が正確で、地声もファルセットも豊かな響きを持っています。特別な声。歌うことが生きること、歌うために生まれてきたような人。僕からみたらそんな精霊的な存在なので、楽屋で話をしていると、この人に日常があるということ自体が不思議なのですが、その日常が彼女の音楽を確かに形作っているのです。
SEED SHIP初出演の潮崎ひろのさん。仔犬のような可愛らしい人。やわらかくてまっすぐな歌声は世界のありようを信じている。信じているが故に危うさも孕んでいる。そしてその危うさを彼女生来のタフネスが抑制している。そんな風に僕には聴こえました。吉田宏志(よっしー)さんのスケール感と包容力のあるピアノとひろのさんのトイピアノのソリッドでキュートな音色のアンサンブルが、楽曲のピュアネスを一層引き立てていました。
僕は12月発売予定の新詩集『ultramarine』(ウルトラマリン)から5篇、ハロウィンの詩「線描画のような街」、「水玉」「花柄」、ちみんさんの歌詞を引用している「希望の駅」と「すべて」、前作『新しい市街地』から「チョコレートにとって基本的なこと」の計6篇を朗読しました。
来月11月のPoemusicaは、たけだあすか (acca)さんが歌いに来てくれます。ボジョレーヌーヴォー解禁の夜です。乾杯しましょう!
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Poemusica Vol.44 ポエムジカ*詩と音楽の夜
日時:2015年11月19日(木) Open19:00 Start19:30
会場:Workshop Lounge SEED SHIP
世田谷区代沢5-32-13 露崎商店ビル3F
03-6805-2805 http://www.seed-ship.com/
yoyaku@seed-ship.com
料金:予約2,200円・当日2,500円(ドリンク代別)
出演:たけだあすか (acca) from大阪(vocal/guitar)
松浦湊(vocal/guitar)
松本佳奈(vocal/piano)
カワグチタケシ (PoetryReading)
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2015年10月10日土曜日
アサガヤノラの物語
カワグチタケシ7ヶ月ぶりにして2015年最後のソロライブは、リスペクトするミュージシャン、ノラオンナさんが日曜店長をつとめる「アサガヤノラの物語」にて、新詩集の先行レコ発ワンマンと相成りました。
完全予約制先着10名様限定の超プレミアムディナーショー! 「銀座のノラの物語」が阿佐ヶ谷にお引っ越ししてそろそろ2年超。おかげさまで6回目の登場です。
JR中央線阿佐ヶ谷駅南口徒歩4分半の「Barトリアエズ」にて。生声の朗読とノラオンナさんの絶品手料理をお楽しみください!
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日曜音楽バー「アサガヤノラの物語」
出演:カワグチタケシ
日時:2015年11月1日(日)
17時開場、18時開演、19時~バータイム
会場:Barトリアエズ 東京都杉並区阿佐ヶ谷南3-43-1 NKハイツ1F
料金:4,500円
ライブチャージ
5種のおかずと炊き込みご飯のアサノラ弁当(味噌汁付)
ハイボール飲み放題(ソフトドリンクはウーロン茶かオレンジジュース)
スナック菓子3種
以上全部込みの料金です。
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更にご予約のお客様にはもれなく、12月5日発売予定のカワグチタケシ新詩集『ultramarine』アサノラ限定特装版を差し上げます。前作『新しい市街地』から2年半の間に書いた作品を収める予定です。お楽しみに!
銀座のときより2品増えたノラさんのお料理の秋メニューも楽しみ。終演後にはまた、みなさんとたくさんお話したいです。
4500円は朗読会としてはちょっと高めの設定ですが、銀座のときより2品増えたノラさんのお料理がなにより素晴らしいですし、他のライブにはない親密な雰囲気で、価格以上にお楽しみいただけることは間違いないです。
ご予約は nolaonna@i.softbank.jp まで。お名前、人数、お電話番号を
お知らせください。お席に限りがございます。どうぞお早目に!
2015年10月4日日曜日
ひろたうた、出かける
主に関西で活動しているバンドhotel chloeのvoひろたうた君が東京で歌うというので聴きに行きました。
彼と出会ったのは一昨年の5月。大阪梅田シャングリラであったとあるライブの打ち上げの席でした。昨年秋に渋谷Wasted Timeでライブを観て、今年3月にはPoemusica Vol.38 に出演してもらいました。
その音楽はときどきサーフミュージックやSK8の影響を感じさせるフォーキーなR&B。そして声がとんでもなく良い。話しているときはそうでもないのですが、歌声は咽喉に絡んでいるのになぜか抜けが良いハスキーボイス。シンプルなギターの弾き語りはグルーヴィでとても豊かな音楽です。
お言葉に甘えてリクエストさせてもらった「かたち」「こっちおいでよ」などスイートで透明感溢れるオリジナル曲に加えて、オーティス・レディングやマルーン5のカバーも気が利いてたな。無理筋のコール&レスポンスも客席の温かい笑いを誘っていました。
彼の大阪の先輩で店の常連でもあるゲストのナギラアツシさんもセンスとユーモアがありました。"Bourbon Street Parade" のイントロがサザエさんのエンディングテーマ(笑)。
会場は下北沢BOOKENDS COFFEE SERVICE。南口の銀だこがクロワッサンたい焼きになったその隣。間口一間のかわいらしくもハイクオリティなコーヒー店です。丁寧に淹れられたハンドドリップコーヒーは濃厚で妖艶な味わいでした。
彼と出会ったのは一昨年の5月。大阪梅田シャングリラであったとあるライブの打ち上げの席でした。昨年秋に渋谷Wasted Timeでライブを観て、今年3月にはPoemusica Vol.38 に出演してもらいました。
その音楽はときどきサーフミュージックやSK8の影響を感じさせるフォーキーなR&B。そして声がとんでもなく良い。話しているときはそうでもないのですが、歌声は咽喉に絡んでいるのになぜか抜けが良いハスキーボイス。シンプルなギターの弾き語りはグルーヴィでとても豊かな音楽です。
お言葉に甘えてリクエストさせてもらった「かたち」「こっちおいでよ」などスイートで透明感溢れるオリジナル曲に加えて、オーティス・レディングやマルーン5のカバーも気が利いてたな。無理筋のコール&レスポンスも客席の温かい笑いを誘っていました。
彼の大阪の先輩で店の常連でもあるゲストのナギラアツシさんもセンスとユーモアがありました。"Bourbon Street Parade" のイントロがサザエさんのエンディングテーマ(笑)。
会場は下北沢BOOKENDS COFFEE SERVICE。南口の銀だこがクロワッサンたい焼きになったその隣。間口一間のかわいらしくもハイクオリティなコーヒー店です。丁寧に淹れられたハンドドリップコーヒーは濃厚で妖艶な味わいでした。
2015年10月3日土曜日
Banda Choro Eletrico live @PRACA11
10月最初の土曜日、表参道PRACA11(プラッサオンゼ)へ。コンポーザー/アレンジャー/ベーシストの沢田穣治さん率いる大編成コンボ "Banda Choro Eletrico" のライブを聴きに行きました。
もとよりかなり流動的なメンバー構成のバンドではありますが、約1年前に同じ店で聴いたときとはすこし編成が変わっています。ステージ上手から、スルドのちっちさん、パーカッション(コンガ、クイーカ、ビリンバウ、etc)渡辺亮さん、ドラムス沼直也さん(F.I.B Journal他)、パーカッション(パンデイロ他)・ボーカル新美桂子さん、ベース沢田譲治さん、トイピアノ伊左治直さん、ボーカルまえかわとも子さん(左利き)、フルート尾形ミツルさん、ギター馬場孝喜さん、トロンボーン和田充弘さんの11人。そこに、ダンサー坂本真理さん、ゲストボーカルのふたり井之上久美子さんとMAKOさんが加わった大所帯。
ブラジルの伝統的なカフェミュージックであるショーロを現代的にアレンジ、と簡単に言うとそうなりますが「現代的」の意味が違う。普通、現代的といえば、ポップなアレンジ、エレクトロニクスやダンスビートの導入ということになると思いますが、このコンボの現代性はそちらではなく無調性な現代音楽やフリーインプロヴィゼーションに向かいます。
曲の主題は、フルート、トロンボーン、ギター、スキャットによるジャズロック・フュージョン的な高速パッセージのリフレインで構成されるものが多いのですが、変奏部の逸脱ぶりが予想を軽く超えてスリリングに展開していく。そしてときおり立ち上がるトイピアノの不協和音の美しい異物感。
ともすればアンダーグラウンドで難解な方向性に嵌りそうな音楽を、ちっちさんのスルドが踏みとどまらせています。あのゆったりとサスティーンの効いた裏打ちのシンコペーションが入るとブラジル感がいやがうえにも増し、カーニバルの狂騒を誘います。
PRACA11さんは日系ブラジル人マダムが供する家庭料理も魅力。フェイジョアーダにソーセージがついたプラット・ド・ヂア・リングイッサはボリューム全開で美味しかったです。
もとよりかなり流動的なメンバー構成のバンドではありますが、約1年前に同じ店で聴いたときとはすこし編成が変わっています。ステージ上手から、スルドのちっちさん、パーカッション(コンガ、クイーカ、ビリンバウ、etc)渡辺亮さん、ドラムス沼直也さん(F.I.B Journal他)、パーカッション(パンデイロ他)・ボーカル新美桂子さん、ベース沢田譲治さん、トイピアノ伊左治直さん、ボーカルまえかわとも子さん(左利き)、フルート尾形ミツルさん、ギター馬場孝喜さん、トロンボーン和田充弘さんの11人。そこに、ダンサー坂本真理さん、ゲストボーカルのふたり井之上久美子さんとMAKOさんが加わった大所帯。
ブラジルの伝統的なカフェミュージックであるショーロを現代的にアレンジ、と簡単に言うとそうなりますが「現代的」の意味が違う。普通、現代的といえば、ポップなアレンジ、エレクトロニクスやダンスビートの導入ということになると思いますが、このコンボの現代性はそちらではなく無調性な現代音楽やフリーインプロヴィゼーションに向かいます。
曲の主題は、フルート、トロンボーン、ギター、スキャットによるジャズロック・フュージョン的な高速パッセージのリフレインで構成されるものが多いのですが、変奏部の逸脱ぶりが予想を軽く超えてスリリングに展開していく。そしてときおり立ち上がるトイピアノの不協和音の美しい異物感。
ともすればアンダーグラウンドで難解な方向性に嵌りそうな音楽を、ちっちさんのスルドが踏みとどまらせています。あのゆったりとサスティーンの効いた裏打ちのシンコペーションが入るとブラジル感がいやがうえにも増し、カーニバルの狂騒を誘います。
PRACA11さんは日系ブラジル人マダムが供する家庭料理も魅力。フェイジョアーダにソーセージがついたプラット・ド・ヂア・リングイッサはボリューム全開で美味しかったです。